会長挨拶
令和6年5月18日開催の日本比較文化学会総会において会長に就任いたしました、澤田敬人です。皆様の研究活動を支え、学会を発展させたいと考えております。2年の任期期間中、よろしくお願い申し上げます。
副会長、理事、監事、事務局のメンバーは、学会運営の実力者で構成されており、会長として頼もしく思います。ともに会員の皆様の研究活動を支え、学会を盛り上げたいと思います。ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
学会の起源を辿ると、既存のディシプリンによる真理の追究では飽き足らない研究者が、既存の枠からの越境の仕方、探究する範囲の決め方、新たな概念のくくり方を考案するために、比較文化という探究方法を見出し、研究仲間を増やしていった経緯があると私は解釈しています。黎明期に学会を牽引なさった芳賀馨先生の、比較文化とは何かについて国境を材料に繰り返しお話になった時のお言葉を思い出す度に、私の解釈は正しいのではないかと考えています。比較文化をめぐって議論すること自体も重要だと思います。
本学会の会員の多くが、まずは一つか二つの他の学会に所属なさり、さらにもう一つの所属として日本比較文化学会を選んでいただいている事実があります。既存のディシプリンは高等教育の教育課程にあり、学位取得まで教育内容がそろう、しっかりした体制に守られた学問であろうかと思います。比較文化はそのような堅牢な体制から飛び出そうとするほうが出会える可能性の高い学問で、先鋭的な魅力に富んだ、比較のための複数性を前提にした、より深い真理の追究の意欲に応えることのできる学問であると考えます。
初代山浦拓造先生、第2代椎野正之先生、第3代芳賀馨先生、第4代太田敬雄先生、第5代代山内信幸先生、第6代奥村訓代先生、第7代八尋春海先生の歴代会長に牽引していただいた学会の遺産を継承し、今後は比較文化の魅力がさらに発揮できるように尽力します。具体的には、地域性と国際性の向上、研究水準の向上、国境を越えた活動の促進、健全な発展と多様性の増進に努めます。
本学会には全国に7つの支部があり、日本列島を縦断する地域性に特長があります。支部のローテーションによる全国大会・国際学術大会の開催と支部に学会誌の編集室を置く体制を維持し、地域に根差しつつも世界に開かれた比較文化の魅力の向上を目指します。
本学会では学会誌『比較文化研究』の査読体制が整備されています。さらに奨励賞の授賞に値する採択論文を推薦する制度があります。採択論文を審査することで、ピアレビューの結果をさらに高い水準で点検し、迅速に上質の研究を見出す点が特長となっています。該当する研究の増加と若手研究者から見て魅力ある制度として続けます。
海外の姉妹学会との交流は、本学会の活動と海外の研究者の活動を共有する重要な機会です。また、会員活動補助費として若手研究者海外渡航費の予算化がなされており、会員の海外での活躍を後押ししています。アフターコロナの時代に改めて利用を呼びかけたい制度だと考えます。
国籍、性別、キャリアパスの多様性を向上させることは、学問の健全な発展の土壌なくして達成できるとは思いません。まず、健全さの阻害要因としてのハラスメントと研究不正に対して厳しい姿勢で臨むためにハラスメント防止と研究不正に関する規程を随時点検し、並行して多様性の向上を達成したいと考えます。
学会の将来像を描くために、ぜひ研究活動と学会運営について会員の皆様のお考えをお聞かせください。魅力ある学会として発展することを期し、会長の挨拶に代えさせていただきます。
第8代日本比較文化学会会長 澤田敬人