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学会としての精神

日本比較文化学会が発足して30年近くなるとは言え、「比較文化学」は未だ新しい学問分野である。その定義も多岐にわたり、当学会においても多くの異なる理解が存在している。その多様な理解を認め合い、容認していくことが、もっとも「比較文化」的なあり方ではないかと思われる。

日本比較文化学会の実質的創設者であり、第3代会長として当学会を牽引してこられた芳賀馨名誉会長が、「比較文化学序説」(『比較文化学論纂』1998)のなかで、「学際的研究を目指して発展してきた学問分野を参考にして、新しく発生した学問についての初期段階」を検証した結果として、比較文化学について、次のように記している。

ある意味では、すべての比較学を総合統括すべき地位に位置づけられる総合文化科学であると言えるし、また、異文化コミュニケーションなどのように文化比較の具体的比較学の位置を占めることともなり得る。(p. 13)

比較文化学も混沌から一種の統一性を期待する全人類的潜在意識という目に見えないものの発屈(原文ママ)のために努力する総合的文化科学であると考える。旧来の学問体系のように、一般的法則性から特殊具体実例を演繹的に検討するのではなくて・・・個々の特殊の事実の検討から始まって、総合的共通点を求め、帰納的に一般的法則性に迫る研究分野であるべきものと思う。(p. 13)

現在、この認識の下で多様な分野の研究者が集い、研鑽しあっているのが日本比較文化学会の等身大の姿である。今後、時代とともに当学会内における比較文化学の定義も当然変化していくであろうが、その原点がここに引用した芳賀名誉会長の言説にあったことだけは忘れず、異なる認識をも容認しあえる学会として発展していくことを願いたい。

日本比較文化学会会長 奥村訓代